キャンプ_戸建住宅


施主夫婦は、あと数年で定年退職を迎える。社会人の2人の娘も同居するが、彼女たちには間貸しするつもりで、夫婦2人の家を建ててほしい、という要望であった。「エディプスの三角形」の強固な家族形態、これに伴う住宅の画一的な形式は、もはや崩壊している。

私たちは、敷地接道側に2階建ての金属の箱を、その奥に白い平屋の箱を用意した。 白い箱は、夫婦2人の家として機能的に充足されている。金属の箱には、ガレージと娘たちの部屋がある。白い箱から触手のように伸びた玄関ホールが金属の箱をえぐり、内部でつながる。

ここでは「家族」をとりあえず宙吊りのまま放置し、しかし「家族」を構成する諸要素を段階的に脱ぎ捨てていく空間操作が試みられた。 家族幻想が解体された後、それでも家族が「家族」として機能するための新しい包摂のかたちを考えるよいテキストとしての住宅。


所在地/東京都世田谷区
主要用途/専用住宅
構造/木造
構造設計/A.S.A 鈴木啓
施工/株式会社 日祥工業
写真/平井広行 小泉一斉