こんにちは。昨日2017年6月12日、映画『ケアニン』完成披露特別試写会があり、あおいけあの加藤さんにご招待いただき、虎ノ門にあるニッショーホールへ行ってきました。
この映画は、小規模多機能型居宅介護施設を舞台に、認知症の高齢者との関わりを通じてひとりの新米介護士が成長していく姿を描いたものです。
この作品では、あおいけあの加藤さんが特別協力されており、かなり忠実に、丁寧に介護の現場と小規模多機能施設の日常を描いているようです。というよりも、ここで描かれている施設は、僕が知る限りの、イメージできる限りのあおいけあそのものでした。
3Kと呼ばれる介護の現場、業務の効率化を図ろうとすれば自ずと管理の機構へと陥り、それは社会的断絶へとつながります。けれど、あおいけあでは、この映画では、認知症であろうと高齢者であろうと人間としての尊厳を尊重するという立場に立ったケアが徹底されていて、その点で、全編を通じて「人間」への敬意に満ちています。
加藤さんは「排除はしない」「これが普通」ということを繰り返し言います。
面白い話があります。あおいけあの施設では、小規模多機能施設であっても子どもたちが毎日のようにここへ来て、好きなことをしています。何故か。それはここが「社会」だから。
あるとき利用者さんが「子どもたちがうるさいから施設に入れないでくれ」と言ってきたそうです。これに対して加藤さんは、「そんな時は子どもたちを叱ってやってください。でも排除はしない。」と説得しました。
この言葉はとても重い。
世界は相対化していき、価値は多様化しています。そうした中で僕たちは「寛容」という言葉を使ってしまいますが、自分本位にしか「寛容」は使えない。価値の多様化、相対化していく世界とは、つまり自立しなければ足場を見失うことでもあります。そうしたときに人は、強いカリスマ、一元的な価値へと回帰してしまう。
だからこそ「排除しない」は、とても重みを持つ言葉なんだと思うのです。
この映画でも、だれも排除されません。
そうしたことがとても印象に残った映画でした。
試写前には、監督の鈴木浩介さんと俳優の皆さん、主題歌を歌われたシンガーソングライターの香川裕光さんが登壇され、舞台挨拶も。香川さんの生歌もご披露いただけました。
写真左から二番目の黒いジャケットの方があおいけあの加藤さんです。
この映画『ケアニン』は、6月17日より全国で順次公開されます。
これは職業柄ですが、こうしたケアを包摂する建築のあり方をあれやこれやと思い描きながら帰路につきました。
加藤さんからいただいたポスターは、早速事務所に貼らせていただきました。
加藤さん、このような機会を頂戴して、この場をお借りしてお礼申し上げます。