ツリーモデルについて 『動物化するポストモダン』補遺

「十八世紀末より二十世紀半ばまで、近代国家では、成員をひとつにまとめあげるためのさまざまなシステムが整備され、その働きを前提として社会が運営されてきた。そのシステムはたとえば、思想的には人間や理性の理念として、政治的には国民国家や革命のイデオロギーとして、経済的には生産の優位として現れてきた。」

(以上『動物化するポストモダン』より引用)

東浩紀は、この単一の社会規範、こうしたシステムの総称を「大きな物語」と言っています。

ツリーモデルとは、「大きな物語」を円滑に機能させるためのトップダウン状の樹形の体系といえます。

モデルとは、ものごとを説明するための枠組みです。

 

たとえば会社組織では、

社長→役員→部長→課長→係長→平社員

たとえば現生人類を生物学的に分類すると、

真核生物 動物界 真正後生動物亜界 左右相称動物 新口動物上門 脊椎動物門 脊椎動物亜門 四肢動物上綱 哺乳綱 正獣下綱 ・・・・・・・ヒト科 ヒト亜科 ヒト族 ヒト亜族 ヒト属 ホモ・サピエンス ホモ・サピエンス・サピエンス

というように裾野を広げながら細分化して体系科するツリーモデルが存在します。

ツリーモデルは、「大きな物語」を円滑に機能させるための体系ですが、見方を変えると僕たちの意識に映る表層を規定している深層には必ず(宗教であれば)神がいて、(会社であれば)社長がいて、(家族であれば)父がいることになります。

深層にある(あるいはトップにあると言ってもいいですが)不動の真理の存在と、これへの探求が近代社会を規範化して駆動させてきました。

そして、「大きな物語」が機能不全をおこして深層の真理が失効した後の世界こそが、現在の「僕たちが生きるこの世界」=ポストモダンということになる訳です。