2013年3月9日と10日、NPO法人CANVAS、KEIO MEDIA DESIGN主催によるワークショップコレクションが、慶応大学日吉キャンパスで開催されました。
ワークショップコレクションは、こども向けワークショップ・プログラムの全国普及と発展を目的に、全国に点在するこども向けワークショップを一同に集め、一般へ広く紹介する博覧会イベントです。
ここには様々な団体が参加しており、この2日間で開催されるワークショップは、実に100に上ります。
以前武蔵野美術大学建築学科のスケッチ会をレポートしました。同会の主催者のひとりである小林敦さんが、今回のイベントに参加している「chick こどもの創造のくに」のワークショップに関わられています。ご連絡いただいたので行ってきました。
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16時を少し回った頃、ようやく会場に到着。雑務をこなしていたら遅くなってしまった。イベント終了まで1時間を切っているにもかかわらず、この賑わい。
受付でパンフレットをいただいて、早速「chick こどもの創造のくに」のワークショップ会場へ。
古い校舎の2階の1室。廊下まで溢れ出た人の波をかきわけて行き着いた会場は、こどもたちの熱気に満ちていた。
順番待ちのこども達。対応するのは、学生スタッフ。
ここで行われているのは、木片を木工用ボンドでくっつけて好きなものを好きなように造形する、というもの。ルールはひとつ、これも廃材の10cm四方の木の板の上に積み上げていく、というだけ。
木片は、小田原の寄木細工や漆器をつくる際に出た廃材、いろいろなかたちに想像力が膨らむ。
どんどん積み上げていく。
木工用ボンドがある程度乾くまで、つくったものは会場の一角で保管。
街並が出来上がる。
造形の多様性に、見ている僕も興奮してくる。
ここで、唐突に「リスク社会」という言葉が頭をよぎる。リスク社会については、別途書こうと思っているが、簡単に説明すると次のようなことだ。
以下大澤真幸著『不可能性の時代(岩波新書 2008)』より要約。
「社会的レベルから個人的レベルまでリスクの可能性ににとりつかれた社会。リスクは、選択・決定との相関でのみ現れる、何事かを選択したときに、それに伴って生じると認知された-不確実な-損害のこと。リスクの一般化は、規範が不断にモニタリングされ修正や調整が施される、再帰性を必要条件としている。
リスクを回避するのに中庸は無意味であり、選択は両極のいずれかでなくてはならない。これは民主主義的決定の基盤を切り崩す。また、知と実践的な選択との間の断絶があからさまになる。
リスク社会は、第三者の審級(見えざる手、理性、予定説の神)を本質のみならず実存のレベルで撤退させる。よって人は、真の自己選択・自己決定が強制される。これは自由そのものが規範化されている社会だ。ゆえに自由は萎える。」
公園から遊具が消え、極端な場合公園がなくなってしまうような状況が頭の中を回りだす。けれど、目の前でこどもたちが一心不乱に造形するその姿に、冷静を取り戻す。この想像・創造の萌芽を切り捨ててはいけない、と思う。
学生スタッフの皆さん。彼らもまた多くのことを考え、学んでいる。
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次回ワークショップコレクション後編、竹シェルターの紹介に続きます。