千葉里山の住宅2 -モンタージュ2-

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12月17日水曜日晴れ、僕と事務所のボスのふたりは、千葉の外海に面した小さな街、大原駅に降り立ちました。千葉里山の住宅の、鉄骨と板金の打ち合わせのためです。

今回現場を仕切る監督さんは、僕たちの事務所のコンバージョンの現場管理もしてくれた仲佐さん、監督であり、大工さんでもあります。仲佐さんは大原のご出身で現在もこの街に事務所を構えています。それに鉄骨屋さんも板金屋さんも勝浦の方、ならば大原で打ち合わせといきましょうとなった訳です。

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北風がびゅうびゅう吹く中、仲佐さんは軽トラックで僕たちを迎えにきてくれました。向かう先は、仲佐さんのお母さんが経営している呑み屋さん、昼間の誰もいない座敷を借り切って、石油ストーブに火を入れてもらいました。

部屋が暖まるのに少し時間がかかる中、鉄骨屋さんが「寒いから焼酎出せ」という漁師町ジョークを炸裂させて、いよいよ打ち合わせのスタートです。鉄骨屋さんは、50代ぐらいかしら、坊主頭に作業服、溶接焼けしたちょっと強面の顔が凛々しい。そんな親方の頭の中には既に僕たちが描いた図面がすべて入っていて、打ち合わせもスムーズです。

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今回の鉄骨の打ち合せのポイントは、基礎まわりと棟の仕口について。

このお家は、敷地が湿気溜まりのため、人工地盤を鉄筋コンクリート(RC)でつくって地面から1mほど持ち上げるのですが、一部は地盤面からRC立ち上げにより支持し、その他の鉛直荷重は鉄骨の柱で支えるというものです。このとき、鉄骨柱をどのようにRCスラブに定着させるのか、また、鋼管杭の中心からの誤差を最小値にするにはどうしたらいいかを話し合いました。型枠工事やRCの打設に対して垂直に柱を立てる方法についても議論しました。

「これ、亜鉛メッキだけど、定着用の鉄筋と一体で制作するとだめだからさ、メッキした柱のメッキ剥がして後で鉄筋溶接すっから。」

っていう感じ。

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続いてお家の棟まわりの仕口部分について。スケッチはうちのボスが描いたものですが、情報が伝わりやすくていい絵ですね。

このお家は方形(ほうぎょう)というエジプトのピラミッドみたいな屋根なのですが、棟の下に柱や束がないため、四方からののぼり梁が棟で一挙に交わるというもの。設計上は問題なくても、いざ施工しようとすると現場は大変です。

今まで

「こんな設計じゃ施工出来ねっすよ。」

仲佐さん声デカ。

「それであればこうしてみましょうか。」

構造設計さん、声ちっちゃ。

「これは僕が担当した物件で5本の指に入る難しさですねえ。」

プレカット屋さんなぜか冷静。

「そんじゃどうすんべえ。」

という打ち合わせを何度してきたことか。端から見たら喧嘩しているようにしか思えない膨大な打ち合わせを経て、やっと鉄骨制作打ち合わせにまでこぎ着けたのです。

僕らと仲佐さん、構造設計さんで錬りに錬った仕口の金物ですもの、問題なく制作していただけることになりました。

「大工さんの工事を考えると、鉄骨のこの部分ちょっとカットしといたほうがいいな。」

という鉄骨屋さんのきめ細かな対応に脱帽。どんな職種でも道を極めた人はかっこいいものです。

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さて、焼酎にありつくことなく鉄骨屋さんにはご退出いただき、板金屋さんにバトンタッチ。屋根端部の納まりを重点的に打ち合わせていきます。

この打ち合わせの目的の第一は、雨処理を問題なく行なえること、今回屋根の一部に谷があるため、ここをどう処理するか頭を悩ませます。第二は、意匠上美しく見せること、板金屋さんから細かくお話を伺いながら、雨処理をクリアするぎりぎりの見付寸法を探っていきます。

僕たちは、設計者として全てを把握している訳ではありません。全体をコントロールしながら確信を持って図面化出来るのは7割程度だと思います。あとの2割、制作、施工打ち合わせを密にすることで、図面を確信あるものにしていくのです。「設計者の言う通りにしろ」とか「現場でどうにかして」とか「現場で考えればいいや」とか、そうした対応は絶対しない。ですから設計、監督、施工者がいいお家を造ろうと目的を一にして、そこへ向かって走るチームワークが不可欠なのです。

そして最後の1割が現場対応です。現場ではどうしても不測の事態がおきます。これを取りまとめていくことも重要です。でもね、現場に入って「イメージが違う」なんて言いません。それは出来たものに対して言う言葉だからです。施工者は、詳細な見積の内容に即して工事を行なっているんです。それを台無しにして、つくったものを無理を言って変更させたりしません。もちろん、お施主さんの変更要望や、僕らにだって現場に入ってから変更したい部分も出てきます。でもそれはすべて前倒しで行なうこと、並の値段で上寿司食べるようなまねはしません。

だから僕たちは、図面を描きながら全体を、あるいは部分を、素材をイメージする訓練を日々行なっているのです。出来たものを見れば誰だって分かることを、事前に把握しておけることが大切です。

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なんだか僕、かっこいいこと言ってますが、そうありたいと思っているということです。

さてさて、打ち合わせも無事終了し、仲佐さんからは施工図の宿題を、仲佐さんのお母さんからは大根の酢漬けのおみやげを頂きました。

仲佐さんは、施工図を自分でどんどん描いてくれます。こういうところも僕らが信頼しているところなんです。

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打ち合わせが終わったらもう日が傾きはじめていました。

電車が来るまでの間、大原の駅前で一軒だけ開いていた食堂に入り遅い昼食をとりました。店内の雰囲気がなかなか素敵で、写真を一枚。

よし、次は年内最後の杭工事があります。頑張っていきましょう。