2015年8月8日(土)、9日(日)の両日、千葉里山の住宅の内覧会を開催しました。
夏の晴天に恵まれ、それでもお盆を前に少しだけ秋の到来を感じさせる、心地よい風を感じた二日間でした。
現地は、千葉県の内陸に位置し、交通のアクセスも良くない場所です。なにせ里山ですから。
そんなところで内覧会をして、はたして人が来てくれるのかしら?という一抹の不安を抱いておりましたが、両日とも多くの方々に来訪いただき、僕たちの設計したこの住宅をご覧いただけました。
ご多忙の中、遠方からわざわざ来てくださった皆様に大変感謝申し上げます。
今回の内覧会は、お施主さんの「家は人が集ってはじめて生きるんです。来てくださる方をおもてなしする場にしましょう。」というお考えを実現する場となりました。
お施主さんも来てくださった方々と歓談されて、楽しい時間を共有されました。
みなさんのリラックスされた感じが伝わるでしょうか。僕たち設計者も住宅の内覧会といったらお家を傷つけないように緊張感を持って臨むものという意識がありましたから、こんなに肩の力の抜けた、まるで親戚のお家に遊びにきたような光景にほっこりしました。
そう、おもてなし。僕たちはキッチンをお借りして得意の手淹れ珈琲の簡易カフェを設け、お施主さんはお菓子をご用意くださり、皆様から頂戴した手みやげもお茶請けとして振る舞われました。
久しぶりに顔を合わせた人、はじめてお会いした人がテーブルを囲んで談笑する風景です。
パプアニューギニアに、部族間で首飾りや指輪を回し続ける『クラ交易』というものがあります。それらの品物に貨幣価値があるわけではないのですが、これによる所有や名誉を回し続けることで、部族間の争いをおさめ、副次的交易の契機にもなる面白い風習です。
『クラ交易』とは異なるものの、この土地に住む人たちには、村落共同体を維持してきた工夫が見受けられます。近所の方が家で穫れたジャガイモを持ってくる。いただく側は、自分の家でジャガイモをつくっていたとしても関係なくこれをいただき、お茶を出し、土間に座って談笑する。こうした交換がぐるぐる回り続ける。
このような緩やかな帰属の習慣は、いまでもまだ日本のいたるところで存在しているんですね。社会学的に見れば村落共同体が解体していく過程にあるかもしれませんが、しかし確実に未だに存続していると思うのです。そしてそれは貨幣価値に回収されないものでもあります。
そうした社会における家の在り方、というのが、今回の里山の住宅の重要な要素でもあったわけですが、これについては次回、竣工写真とともに具体的にお話し出来ればと考えています。
さてさて、内覧会は午後5時まででしたが、いつのまにか日も暮れて、そうするとお施主さんが、これも事前にご用意くださっていたんですが、パンとハムとレタスを出してきてくださいました。美味しい蜂蜜と発酵バターも。
お施主さんのサプライズにも驚かされましたが、なによりもこんなに来てくださった人を暖かく迎えてくれる内覧会なんて、設計者の僕たちにとっても新鮮であり、心温まるものでした。
あらためて、この場をお借りして、お施主さんにこのような場をご提供いただけましたことに、心より感謝申し上げます。
ステキな、本当に素敵な内覧会でした。