埼玉県深谷の住宅3 -開口部の納まりと寸法をどのように考えるか-

桜の開花宣言もあり、大分春めいて参りました。

埼玉県深谷の住宅も、3月末の上棟に向けて現場工事が進んでいます。

僕ら設計者は、ポイントで現場に赴き、設計図書通りに建築物がつくられているかをチェックするわけですが、監理には他にもやることがあるんです。

今回は、開口部をどのように納めるのかということについて、埼玉県深谷の住宅を参考にして考えてみたいと思います。

眞下様邸  AW1枠詳細図.jpg

僕の事務所では、開口部、つまり窓については、平面詳細図や矩計図にはその納まりを描くんですが、実施図面に枠詳細を描きません。

いや、アルミなんかの既製サッシに限ったことですが。

それには理由があって、現場でこのように納めたいということが優先されるべきで、逆に厳密に寸法を追っていけば、理想の納まりになるとは限らないからなんですね。

図面を先に描くと、どうしても寸法が優先されてしまいます。現場は、様々な要素が絡み合って施工されていきますので、はじめに寸法があると柔軟な現場対応が出来なくなる場合があります。

平面詳細図や矩計図にある程度開口の納まりを描くことで、設計も施工もここが肝なのねって意思を共有できますし、その上で現場に入ってから詳細調整を図るようにしています。そうすると、こんな納まり想定してなかった、増額になりますよっていう変なことにもならないので。

それで、現場に入ってから描いた開口部の図面が上に添付したものです。

壁の端から端まで全部開口にすることで、内部の壁が中庭の外壁まで続いていくように考えています。同時に天井にカーテンボックスが埋め込まれ、また床はタイルなのでこの割付も気にしなければならない。そうした床壁天井の縛りの中でこう納めるしかないっていうポイントを探るんです。

でもこのときも、寸法についてはあそびを持たせていて、施工上ここが肝心というポイントのみが監督さんに伝えられればいいわけで、そこさえ押さえられれば、あとは施工者判断に任せますよっていう図面にしておくんです。

僕らの考え方は、建築の精度を上げるためにディテールは重要だけれど、それは図面上の寸法に宿るとは限らないと思っています。もちろん、寸法ありきのディテールだってありますが。

AW1壁納まり.jpg

そして今回の現場監督の深谷さんは、流石です。

僕の描いた枠詳細のポイントを押さえて、このように施工しますという図面を描いてくださいました。大変美しく納めていただいています。これって僕の歌への返歌ですよね。

因に住宅用サッシでサッシ屋さんが枠詳細を描くことはありません。

予算あっての建築ですから、簡単にスチールサッシやビル用サッシを使うこともままならないですし、外壁だって、今回ガルバリウム鋼板の折板ですが、工務店さんが最も安くていいものを提案くださいました。そうした様々な制約を逆手にとって、それでも美しく納めましょうって設計と施工が協働している。それは工事の醍醐味であり、最もいいかたちで現場が進捗している姿だと思います。

住宅で、現場監督さんが詳細図出してきてくれるなんて、ほとんどないことなんですよ。

深谷さん、ほんとうにありがとうございます。

お施主さん、最高のかたちで現場は進んでいます。