2016年11月19日(土)、山梨県中央市の新築現場では、現場定例会議が行なわれました。
床から1860mmより上の壁と天井の塗装部分の色について、前回概ね決定したものの色サンプルが出来てきたので、これを参考にしながらお施主さんと最終決定を行ないました。
6つの小屋がズレながらつながって一軒になるこのお家、それぞれの小屋ごとの色が決定しました。全部で6色。渋みがあり、落ち着いた雰囲気になると思います。とてもいい色に決定したなと、僕も満足しています。もちろんお施主さんも喜んでくださいました。
色は、建築のフレーム化という意味では二次的な要素ではありますが、選択を誤ると空間を台無しにしてしまいます。鮮やかな色を使うにしろ、指し色を入れるにしろ、色というのは、視覚に直接訴えるもののため、これに囚われやすいですから、いつも空間を想定しながら一歩引いて考える必要があります。なかなか気を遣う部分です。
さて、今日は写真の方、今回の住宅を現場で仕切っていただいている丸正渡邊工務所の監督である角田さんをご紹介します。
角田さんは、現役の大工さんでもありますが、このお家では現場監督として、工事の進捗をコントロールしていただいています。
角田さんの凄いところは、ガンガン施工図をご自分で描かれるところです。もともとゼネコンの木工事全般を仕切られる仕事が多かったこともあり、そうした現場ではゼネコンの監督さんは木工事に明るくないことも多いため、都度施工図を提出する必要があったんだとか。
僕たちの描く図面では、あえて枠詳細を描かないのですが、それはこのように作りなさいという断定的な指示を避けるという意味があります。その代わり、このように納めたい、そう納めるにはこのような取合いや寸法でいけるのではないか、ということを平面詳細図や矩計図に記載しておくようにします。そうすると、図面を見た監督さんや職方さんが「なるほど、設計はこうしたいわけね。だったらこうしたらどうだろうか。」なんてことを考えてくださるんですね。これは設計と施工の図面を介しての対話です。これがツーカーでできると現場監理がよりいっそう楽しいものになります。
角田さんは、そこらへんの勘所が極めて鋭敏で、僕が描いた図面の「まさにここ」を施工図にして、どんどん送ってくださるんです。それをもとに主に電話打ち合わせを行ない、双方の認識を共有し、決定に至るというやりとりをしています。
僕の図面、特に平面詳細図なんかでは、かなり細かく寸法を入れています。一見この寸法で作れといっているような図面ですが、そうではなくて、例えば建具の枠をこの寸法、納まりにするために何mか離れた、時に十何mも離れた場所の取合いから追い出していくと、結果こうなるということを記載しているんですね。そうしたことを角田さんはちゃんと見られていて、施工図を描くように意匠図を描いている、なんて嬉しくなるようなことをおっしゃってくれました。角田さんは、まず設計がどうしたいのかをイメージして動かれるんですね。そうしたことが出来る監督さんは、決して多くはないと思います。
もちろん角田さんは、現場の段取りや職方さんとのやり取りも大変上手で、またお施主さんへの対応もとても丁寧なものです。大工さんでもあるということもあってか、本当に細かいところまで目が行き届く方です。
だからでしょうか、ほぼ毎日のように「ここどうしましょうか」とか「こうしたいんだけどどうですかね」なんて僕の携帯に電話がかかってきます。僕もいつも電話に出られるわけではないのですが、でも「メールにして」なんて言わないことにしています。なぜなら、角田さんからの電話は、いつも的を射ていて「なるほどねえ」と思うことも多く、とても楽しいやり取りだからです。遠方の現場なので、頻繁に現地に足を運ぶことが叶わないですが、それでも電話で十分ニュアンスまで理解できるので、僕としても大変助かっています。
そんな監督さんの仕切られている現場が悪いものになるはずがありません。まだまだ工事は途中ですが、確信を持って、けれど慎重にこれからも対応していきたいと思います。