藤沢あおいけあ小規模多機能型居宅介護施設3 -多様な人が集う場としての高齢者施設-

2017年2月22日水曜日、雨雲が低く空を覆い、冬の寒さに戻った日、藤沢あおいけあ小規模多機能型居宅介護施設(以下「おとなりさん」)の工事現場では、週に一度の定例会議が行なわれました。

屋根のガルバリウム鋼板が、空の色を映して鈍く光っている様子がとても美しかったです。

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現場では家具の打合せを主軸に、大工さん、電気屋さん、設備屋さん、板金屋さんと話をしました。細かな内容を含めて、いつも結構なボリュームの打合せになります。

寒風吹く中での長時間の打ち合せは、身体の芯まで冷えきってなかなか過酷なものです。そうした真冬の工事現場で黙々と仕事をされる現場監督の中西さん、多くの職人さんに対して頭が下がります。

今までなかなか「おとなりさん」についてブログを書けないでいたのは、4ヶ月という短い工期の中で、様々な工種の職方さんが入り乱れ、また多くの資材に囲まれて、建築をご紹介できるような写真を撮影できないでいたからです。

やっと外部建具も設置されて、仕上にいたる下地になる工事も一段落してきました。2月中には、外回りの工事を完成させて、足場を解体するとのこと。建物があの敷地に建つ姿を見るのが今から楽しみです。

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これは、1階の食堂から施設を見通した写真です。天井付近の電気配線が回っている部分はこれから塞がれ、床には無垢のアカシアフローリングとこれに面したコンクリートの土間が出来上がります。写真手前の食堂部分は、同施設で食事を振る舞うシェフ希さんが切盛りされる予定で、ここを訪れる方が気軽に食事を楽しめる場となります。

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この写真は2階の、法規上共用廊下になる外部テラスです。床にはセランガンバツのウッドデッキが敷かれ、木製の手摺が回ります。写真左は3軒の共同住宅、その中の一軒には、加藤社長のお知り合いのバリスタによるカフェが入る予定です。

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屋根の軒の下がりによって出来た吹き抜け空間。ここから1階へ下りる滑りポールも設置され、子どもたちの日常の遊び場として開放されます。

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あれ、何の施設だったっけ?そう思ってしまうほどに、この建物は、多様な人が利用できるように計画されています。それは社長の加藤さんの考えによるものです。認知症の高齢者を僕たちの目の届かない場所に隔離しないこと。この施設は、じいちゃん、ばあちゃんの日常の延長にあり、故に社会と常に通じている場所となることを目指しているのです。

僕たち設計者は、時に「多様な場所をつくる」ということを言います。それは、画一的で均質な空間にない居場所の多様性を生むことを意味しています。

しかしこの施設計画では、はじめから多様な人々が集うようなソフトが、あるいはプログラムと言ってもいいですが、用意されていました。設計は意図的に多様な場を作るのではなくて、多様な人々がごちゃごちゃと集ってもきちんと整理されて、機能する建築をつくることを求められたのです。

この建築は、小さな村落共同体と言っても良いですし、もしくは疑似家族を包摂する大きな傘と言っても良い。重要なのは、人が如何なる状況にあっても社会とつながっていることです。そうしたソフトによる思考をハードとして実体化する手腕が僕たち設計者に求められているのであれば、ソフトとハードは、地続きであると考えなくてはならないと思うのです。