こんにちは。
2017年12月14日木曜日、神奈川県藤沢市鵠沼の戸建て住宅の撮影をしてまいりました。
このお家、建築家が設計されたものではなくて、東京造形大学の学生さんの作品です。びっくりですね。
このお家を設計したSさんは、東京造形大学の4年生で、卒業を控えています。といっても年齢は60歳、大手不動産会社に勤務後45歳の時に独立されて会社を設立、年間20棟を超える建売住宅を販売しています。元々不動産物件にデザイン監修されていた経緯があり、より専門的な勉強をしたいという理由で同大学に入学されました。
Sさんが2年生の時に僕は受け持っている授業で初めてお会いしたんですが、そんな彼ももうすぐ卒業ということで、卒業制作でお家を設計監理して建ててしまいました。
わずか建坪7坪の総2階建、一部ロフトのある単身者用戸建て住宅です。
多趣味な男性単身者が戸建て住宅に住む、というのがコンセプトのようで、足場板をあしらった無骨な外観の他、内部においてはタモ材で床壁を張り巡らせた2階のLDK、白く統一された1階の寝室、ロフトの茶室など、各層ごとに趣向を凝らしたインテリアがつくられています。
モデルをつとめてくださったのは、Sさんの義理の娘さん、空間スケールが際立って、急遽モデルをお願いした甲斐がありました。
僕は、建築写真家として建築を撮影する際には、建築設計者としての僕を出さないように心がけています。今体験している建築に素直に向き合って、その建築を第一にきちんと説明すること、次に写真という媒体に建築をスライドさせることで、異なる階層の作品としてジャンプさせることを意識しています。それは、建築をよりよく見せてやろうというのとは、異なることなんですが。
そう言っても今回は、僕が教える学校の学生さんなので、ついつい建築設計者としてああだこうだと言いたくなってしまったのは、ご愛嬌。ただ、Sさんは、とても素直にマテリアルの強さを信じていらっしゃって、そうした感性がストレートに伝わってきたのは、とても心地よいものでした。
家具類もSさん設計のもの。木製の寝椅子などは、Sさん自ら大学の工房で製作されました。タモ材を接ぎ合わせるところからやられたんだとか。継ぎの仕事も美しく、力作でした。
大学卒業後もSさんは、年間1棟ぐらいずつは、自ら設計した住宅を世に出していきたいとのことでした。こうした志を大きく持たれた方の仕事に写真を通じて関われたのは、本当に幸せなことです。今後も撮影させてくださいと前のめりにお願いしてしまったのはちょっと図々しかったかな、などとちょっと反省しつつも、とても楽しい撮影だったのでつい、ということで許してください、Sさん。