在宅を楽しもう -僕の半径1mをご紹介します-1

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こんにちは。

新型コロナウイルスが世界に蔓延して、僕たちの日常生活も様変わりしてしまいました。誰もが大変な毎日を過ごされていらっしゃると思いますが、少しでも肯定的に日々を過ごすことができたらと思います。

建築的に考えてみても、物理的に人が集い交わることで空間的にも何らかのアクションが起きるということについて、今度はその逆、つまり人間同士が接触しないということから建築的、空間的に何ができて、それはどのような効果をもたらすのかというような話も出てくるのではないでしょうか。

他の分野でもそうだと思いますが、建築の世界でも閉じた領域での先進的な提案や議論は、ある種のショックを伴うものである点で魅力的ではあるのですが、現実的に物理的実践ということになるとそう上手くは話は進みません。例えば、少子高齢化社会における「都市を縮小化する、たたむ」なんていう提案は、現実には郊外の肥大、増殖が起こっていたりもするという具合です。

むしろ劇的に「世界」が変わってしまうときこそ人間の生活そのものが変容し、僕たちの住空間に変化がもたらされるように思います。産業革命が近代の扉を開いたということは言うに及ばず、巨大地震や今回の新型コロナウイルスの件などの自然災害なんかも、その後の世界に何かしらの変異を伴うくさびを打ち込むことになるんでしょうね。

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そんなことを考えたりしますが、僕の現実はと申しますと、郵便物の確認や資料を取りにとか大学のオンライン授業のために週に一度事務所に来るぐらいで、あとは不定期に昨年の台風被害にあった住宅についてちょっとしたお手伝いをしてはいますが、それ以外に出来るだけ自宅から出ないようにしています。

当然行動範囲も狭まりますが、外出しないというのは気持ちも塞ぎがちになりますし、時間を持て余すこともあるかと思います。そんな中、例えば音楽家がオンラインで曲を演奏されたりするのを視聴するのは楽しいですし、様々な分野の方が、専門領域や趣味のものを発信されていらっしゃったりして、純粋に楽しむこともできます。

僕なんか一介の建築設計者ができることなんて限られたものですが、それでも読んで楽しかった本や、好きなアーティストの絵画や絵本や写真集をご紹介したり、カメラやレンズについてお話ししたりすることはできますし、気になられた方は本を手に取られたり新たに趣味を広げられることもあるかもしれないな、などと考えるようになりました。

そこで不定期ではありますが、「在宅を楽しもう -僕の半径1mをご紹介します」ということで、経験して楽しかったもの、興味を注いでいるものをご紹介していこうと思います。

第一回は、山口桂著『美意識の値段』(集英社新書)をご紹介します。帯を生物学者の福岡伸一さんが書かれていて「絶対に面白い本」とおっしゃられていたので、帯買いしたものです。

著者は世界二大オークション・ハウス、クリスティーズの日本法人の社長です。オークションの観点からアートへの関わり方、体験した様々な出来事、ハプニングなどについて、豊富なエピソードを平易な文章で書かれています。とかく敷居の高さを感じる美術界や、ましてやその内情に触れることもないオークションという世界について、美術への一つの切り口による導入ではあるものの、僕たちが知らないことを教えてくれます。

「美術品の値段は、相場、希少性、状態、来歴の4点を考慮する」なんて話や、「全ての美術品は、作られた時は現代美術である」という名言などもあり、ライトなエッセイ集という趣ですが、どなたでも気軽に楽しく読める一冊ではないでしょうか。

何でも突き詰めれば、コアな領域、閉じた専門分野へ没入するものです。それはとても楽しいけれど、一方でそこに至る導入として広く浅く、間口を広げるのもまた大切でもあるように思います。ここでは、そんな感じで肩肘張らないもの、ことについてご紹介していければと考えています。