千葉M邸完成写真と建物についての具体的な説明2 -外観と素材-

こんにちは。

2020年9月12日、千葉M邸のお引渡しがありました。設計からは、建主さんへ業務完了のご報告と完了検査の済証をお渡しし、工務店からは補修箇所の確認と設備機器類の説明の後、鍵のお引渡しがありました。これで設計から工事に至る全ての業務が完了いたしました。建主さんは、これから新居で新しい生活を送られる事になりますが、ご家族皆様ゆっくりとお家に慣れていただきながら素敵な毎日を過ごしていただければと思っております。

「千葉M邸完成写真と建物についての具体的な説明」の第二回となる今回は、外観のデザインと素材の選定についてお話ししていきたいと思っております。

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 この建物は、ほぼ総二階という、一階と二階が同じ大きさの箱型の形状をしています。箱型にすることで、建物の表面積を抑えて減額につながる効果があるのですが、単に箱型のまま建築にしてしまうとワンボリュームになってしまい、のっぺりとした印象の建物になります。それはそれで良いですが、今回は少々建築を軽やかに見せるよう設計をしました。 玄関や居間と外部空間を繋ぐのに、水平線を強調した庇を設け、この上下で外壁素材を変えることで、上部の家形の箱が浮いているように見せています。つまり、庇という機能要素が建物の上下を分かち、オートマチックにデザインを成立させているわけです。
建物の上部は、マットグレーのガルバリウム鋼板の瓦棒葺にしています。ガルバリウム鋼板は、アルミの合金でかつてのカラー鋼板やトタンと異なり、非常に錆びにくく経年劣化のない素材になります。メンテナンスフリーをお考えの方には、お勧めの素材です。
建物の下部は、窯業系の下地サイディングに塗装をしています。フッ素を含む塗料のため、耐候性が高く長く綺麗な状態を保つものを選んでいます。 お安くするだけならば、表面が木調だったり、タイル風のサイディングが工業製品として存在していますし、そちらの方が一般的なものですが、僕や建築家といわれる他の設計の方の間では、石や石の代替としてのコンクリート、鉄のような金属、木というように、自然素材やそれの代替のものをストレートに使用したいという考えがあり、出来るだけフェイク品としての工業既製品を使いたくないというのがあるんですね。
瓦棒葺については、当初はより繊細な縦ハゼ葺を検討していたのですが、これについてもハゼをかしめて接合する昔ながらの職人の技は廃れてきていて、現在既製のジョイントが多くなってきました。今回も、職人さんの手によるハゼは難しいということになりましたが、瓦棒葺ならやってやるよ、と板金屋さんの親方がおっしゃってくれたので、これでお願いすることにしました。今回、僕は、デザインのためのデザインをしないと決めていましたので、機能や職人さんの仕事がデザインを決定するような方法をとっています。
窓についても、機能的に内部からの開口がファサードに反映しているだけです。とはいっても、設計自体、僕の頭の中を通してまとめられるわけですから、恣意的にデザインバランスを図られてもいるわけで、それはそれで良いのだと思っています。
庇には、亜鉛メッキのスチールパイプがこれを支持していますが、これは、内部が吹抜けになっているため、片持ちで庇を支持できなかったからこうなりました。こうしたことも、構造的にアクロバットな対応をしないで、必要なものがデザイン要素として存在するような設計をしています。
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デザインと一言で申し上げても、設計者の思想や言語的なアプローチによるもの、都市的なスケールや近隣環境から導き出すもの、過去の建築ストックからエッセンスを抽出したり、単純に意匠的にデザインを決定するなど多岐に渡ります。
どれが良いとか悪いとかということではないのですが、今回は、建主さんのご要望とご予算のバランスを図りながらプランや機能用途から必然的にデザインが決定されていくプロセスを重視しました。もちろん設計を進める過程で意匠や素材のバランスを決定する必要がありますが、その最終的な判断は僕個人の経験と知識に基づいた恣意性に委ねています。
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これからお家づくりをご検討されている方に、何かしらのヒントが隠されているかもしれませんので、このブログを一つのご参考とお考えいてだければ幸いです。