千葉M邸完成写真と建物についての具体的な説明3 -屋内動線-

こんにちは。

「千葉M邸完成写真と建物についての具体的な説明」の第三回となる今回は、この建物の骨格になっている入れ子と回り廊下による屋内の動線についてお話ししていきたいと思っております。

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まず、設計当初プランのフレーム作りをするにあたって、建主さんからいただいたご要望を記す事にします。

1勝手口は不要 
2玄関からリビングダイニングを通らず直接キッチンへ行ける 
3玄関からリビングダイニングを通らず直接和室(客間)へ行ける
4リビングダイニングとキッチンは繋がっている 
5キッチンから1階の全てのリビングダイニング、和室、水廻りを見渡せる
6洗濯物をリビングダイニングに干さない(できれば専用の部屋が欲しい )
7和室は、リビングダイニングと縁を切って独立した部屋とし、且つ開け放すとリビングダイニングと関係を結びたい 
8近隣に子供たちが騒がしくすることで迷惑をかけたくないので、家の真ん中に子供部屋を作りたい
9階段は、空調効率を高めるため、リビング空間に設置しないで欲しい
10水廻りは、リビングダイニングから直接つながらないでほしい
11水廻りは、玄関近くに配置しないでほしい
12水廻りは、キッチンとの機能動線を考慮してほしい
以上が建主さんからいただいたご要望になります。
回答としては、建物内部にリビングダイニングを入れ子とし、その周りを動線にしました。つまり建物の真ん中にリビングダイニングの箱を設け、これに回り廊下を配置し、ここに付帯機能を接続するという方法を考えました。
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玄関の見通しです。右手手前にダイニングへの入り口、その奥に直接キッチンへ入る開口となっています。 左手は、下足収納他様々な収納と家事ワークスペースとなっていて、収納部屋ではなく家具収納を今回はご希望されました。この収納家具には、何がどこに入るか既に全て決まっています。 玄関ホールは吹抜けになっていて、リビングダイニングの上部が子供部屋です。外壁と子供部屋を切り離すことで、子供たちの声や物音の近隣への配慮を行っています。
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玄関からリビングとこれを通らずに和室へ通じるもう一つの動線です。お客さんは、こちらからの導入がなされることになると思います。 吹き抜けの一部天井が下がっている部分は、上に2階の子供部屋のテラスがあるためで、この下り天井を利用して洗濯物の室内干しスペースにしています。室内干しは、個室を確保することはできませんでしたが、夜の間に干すこと、リビングダイニングなど室内に持ち込まないことがご希望でしたので、この廊下を利用しました。ここが洗濯物で埋まっていても、玄関動線はもう一つありますので、問題ありません。
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玄関からの吹き抜けの廊下とリビングダイニングとの関係です。 境界は、一枚の大きなガラスの框戸で仕切られていて、普段は開け放たれます。
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階段は、リビングの東側に廊下を挟んで計画しています。
閉塞感をなくすため、並びの和室を開放すると一室空間になるようにしました。和室「客間)は、普段お子さんの遊び場を想定しているため、階段下のニッチや踊り場の段差など、立体的な遊び空間に取り込んでいます。
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階段は、コストを下げるため手すりも含め木造としていますが、今回2×10材という壁式工法で使用される規格寸法のSPF材を組み合わせて施工しています。 大工さんには、近くのホームセンターで材を選定いただきました。 簡素ながらも足感触も良く、ローコストとして僕も時々設計する階段です。
和室、階段の奥、回り廊下の突き当たりがトイレや洗面所などの水廻りとなっています。玄関からは最も遠い場所になっていますが、1階、2階の中間的な位置にあると同時に、キッチンのすぐ脇に計画しているため、機能上使い勝手の良い配置となっています。
いかがでしたでしょうか。リビングダイニングを入れ子とし、この外周部を回り廊下にしながら諸室、諸機能に繋ぐ事で、一見矛盾するかに見えるご要望を機能的に整理し、無理のない計画に落とし込んでいます。この回り廊下と合わせて多くの建具の開閉により、空間が複雑な生活へに対応していますし、建具を開け放つと空気も対流する心地よい気積の大きなワンルーム空間になります。
参考に、内部の素材についてもここに記しておきます。
「壁」 外周部の内壁は、石膏ボードの上にビニルクロス貼り、リビングダイニングを囲う壁は、構造壁であるラーチ合板にウレタンクリア塗装をしただけで、減額対応しています。
「床」 フローリングはバーチ(樺)の無垢材です。ユニ材といわれる木を剥いだもので節ありなので、無垢材ではありますが、手に入れやすい価格です。
黒い床は、Pタイル。これは減額対応で選定しました。
「家具・建具」 家具はシナで、大工さんに箱を作ってもらい、扉を建具屋さんにお願いしています。
木製内部建具は、スプルース。白木の針葉樹です。
玄関扉は、檜の造作で、扉は建具屋さん、その脇の木製枠は大工さんが作ってくださいました。この部分は、雨で濡れるため、腐食対策としてプラネットジャパンの自然塗料を塗っています。熊本城で使用されているものと同じです。