新年明けましておめでとうございます。
昨年は、コロナ禍により大変な一年でしたが、今年は状況が好転し安心して日常を過ごすことができるようにと願っております。
ここ千葉県は、正月のあいだ天候に恵まれ、穏やかな晴天が続きました。僕も年末年始を自宅でのんびりと過ごすことができました。
年をまたいでしまいましたが、昨年末に撮影させていただいた「いろは設計室」さんが設計監理された『河口湖の家』の完成写真について、今回は内観をご披露したいと思います。
このお家は、コンパクトな平家の木造建築ですが、自然素材をふんだんに使われた非常に贅沢なつくりとなっています。また、いろは設計室さんの綿密な空間プロポーションの検討と開口計画により、心地よい身体スケールを獲得していて、同時に光の含みといいいますか光と空気が可視化されて空間を満たしているような感覚を抱くことができます。
僕は、最近建築について、その造形よりも造形が切り取る空間の方に興味の対象が移ってきています。もちろん造形と空間は相補的に機能しているわけですが、体験的に空間を意識し、その気積のなかで遊ぶような感覚から造形が後退するようなものに惹かれるようになりました。いろは設計室さんが設計された『河口湖の家』は、まさにそうした感覚を享受することができるお家であり、心休まる空間体験でした。
これは、リビングダイニングの写真です。
向かって右手が南面で大きな木製引戸になっています。ここから富士山を臨むことができるため、勾配天井に沿ってハイサイドライトも設けられました。北側には下枠に腰かけられる高さの腰窓が設けられているため、開放感や風通しと共に時間によって回り込む光が複雑な表情を生んでいます。
写真正面には書斎コーナーと飾り棚、玄関へ向かう廊下へと続く開口があります。これらの造作家具や内部建具は、全て無垢材を使用した木製のものであり、美しい風合いと共に経年の変化も楽しめます。
床は、無節の無垢材、壁は薄いグレーの左官仕上げになっています。こうした内装の仕上材が開口からの光を一旦吸い込み拡散させながら吐き出すようで、そうした光の粒子によって可視化された空気が空間を満たす感じがなんともいえず安らかなものでした。
壁内に引き込まれている障子を引き出すと、ガラリと印象が変わります。光は拡散され、ワントーン落ち着きのある空気に包まれます。
南面の障子を見たところです。縦の桟を主としながら横の桟を揃えることで、美しい格子のリズムが出来上がっています。
美しいプロポーションと空気の滞留を写真に撮れていたならば、僕にとってこの撮影は、成功です。良い建築であるほど、実際に体験した空間の感覚をトレースしたくなるものです。
続いて、建主さんの奥様が使用されるヨガのお部屋です。
南面開口正面に大きく富士山を臨むことができます。
こちらのヨガのお部屋は、玄関の正面に位置していて、引き戸の開閉によって玄関と廊下、ヨガのお部屋の境界をコントロールしています。玄関と、引き戸の開閉による異なる印象の廊下をご覧ください。
次に主寝室になります。リビングダイニングと比べても天井高も低く設計され、採光量も抑えられて落ち着きのあるお部屋になっています。
いかがだったでしょうか。しっとりと柔らかな光と空気に包まれたこのお家の素晴らしさが伝わりましたら幸いです。これからお家づくりをご検討されていらっしゃる方には、素材の選定の他、開口のコントロールによる様々な光の表現、身体スケールに呼応した空間気積について、またそうしたものが関係をもってふくよかな上質の建築を生み出すことを知っていただければ嬉しく思います。
次回は、スナップフォトで『河口湖の家』をご紹介します。建築写真とは違った空気感を表現していると思いますので、よろしければそちらもご覧ください。