一級建築士事務所なかおデザイン室 設計『垂木の平家』

こんにちは。

今年の夏はお盆以外で夏休みを取り損ねてしまいました。せっかくの夏をもう少し楽しみたいと思い、この週末に千葉県勝浦市の海までシーカヤックを体験してきました。コロナ禍で海は開いていませんでしたが、それは海の家などが営業していないのでトイレやシャワーがないため海水浴ができない状況ということです。サップやシーカヤックなどのアクティビティをやられているところは通常営業されていて、少々値は張りますがシャワーやトイレも完備されていますし、少人数の参加者に対して複数名の先生がサポートしてくれ、何よりも広い海で人との密な状態を気にしないで楽しむことができます。シーカヤックは、サップに比べて操縦も簡単ですし、沖に出ると大きな波に乗るような(翻弄されるような?)感覚を体験できて、非常に楽しい時間を過ごすことができました。

気分転換もできましたし、また仕事も頑張ろうと思います。

さて今回のBLOGは、千葉県酒々井町で一級建築士事務所なかおデザイン室を主宰されている中尾雄介さんが設計監理された『垂木の平家』をご紹介します。

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2021年7月18日、晴わたる夏の暑い日に『垂木の平家』の撮影を行いました。中尾さんの作品を撮影するのは今回初めてになります。メールで直接ご依頼くださり、今回の撮影となりました。中尾さんは、長く大手組織設計に勤めていらっしゃったので、当日この住宅に伺うとアトリエ系の設計者とは一味違った設計の気遣いをされていて、僕も大変勉強になりました。

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『垂木の平家』は、建築基準法上は2階になると思いますが、寄棟の大屋根の下が伽藍堂というかワンボリュームになっている、体験的には平家の住宅になります。この大空間に4つの異なる機能ヴォリュームが立体的に包摂されていて、それらの大きさと配置によって空間が分節され、またつながるといった設計手法を採用されていました。通常建築設計では、床、壁、天井を面的に構成していき、平面上では線を引くことで境界決定していくのが一般的ですが、この住宅の場合は地と図の押し引き、両者の関係において境界決定がなされるとともに、それにより機能、空間分節を一気に行うため三次元的な設計思考が必要になります。

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中尾さんは、大学時代岡河貢さんに師事されたとのことでした。岡河貢さんは、ベルナール・チュミの元で学んだ建築家で、ヨーロッパ近代建築から引き継がれる建築の生成について研究されている方です。中尾さんもこうした建築の「つくりかた」をこの住宅で実践されたとお聞きしています。

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こうした設計手法では、マッスとヴォイドの相補性について理解がないとなかなか上手くいかないものです。特に日本人は伝統的に三次元を二次元化することには長けていますが、彫刻的に立体を捉えるのが苦手ですね。車のデザインなんか見ていると僕は強くそのように感じます。そんな中で、中尾さんの設計は、この設計手法を非常に巧みに実践されていて、面白かったです。架構は、木造駆体をあらわしに各所素材の生の部分を精緻にデザインしながらもさりげなく表現し、意匠的には日本的なデザインでまとめ上げていました。

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この論理的な空間生成のプログラムは、一方で造形センスがないと説明的で面白みに欠けるのですが、『垂木の平家』は非常にそのバランスが巧みで魅力的にまとめあげられていました。包摂空間の大きさについては、日本のモダニズムの流れからすると身体感覚として大きすぎるとおっしゃる方もいそうですがそもそも空間生成の規範が異なるので、「議論の階層が異なっています」と僕は言っておきたいと思います。

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さて、当日の撮影についてですが、この日は真夏の太陽がギラギラと照りつけるとても暑い日でした。僕は汗びっしょりで、のぼせそうになりながらの撮影になりました。それでもマッスとヴォイドの相補性によって成立しているこの住宅においてシークエンスの誘発がそもそもこの空間に内在しているため、視点のちょっとした移動で立ち現れる表象が移ろうことから、多視点的に撮影を行う必要がありましたし、またそうした空間の特性を余すことなく記録するつもりで奮闘しました。それは僕にとってとても楽しいものでした。魅力的な建築空間を記録できるだけ記録してやろうと意気込んで、一日があっという間に過ぎて行きました。撮影中、中尾さんは食べ物や飲み物、冷たく冷やしたおしぼりをご用意くださり、帰り際にはお土産のお菓子まで持たせてくださいました。本当にありがたく、この場をお借りしてお礼申し上げます。

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当日は、かなりの枚数を撮影しました。ここでは多くの写真の中からいくらか見繕って掲載致します。これら写真をご覧になられて他の中尾さんの作品も観てみたいということがありましたら、どうぞ一級建築士事務所なかおデザイン室のHPを訪問されてみてください。

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