こんにちは。
1月以上前になりますが9月23日（木）の秋分の日に、千葉で活躍されているひだまり設計工房設計の山本明香さんが設計監理、施行された『私とオット、50代これからのふたり暮らし』という名前のマンション住戸のリノベーションを撮影してきました。
山本さんは、設計事務所を主宰する傍ら工務店の代表でもあり、設計から施工まで自然素材をふんだんに用いた一貫して丁寧な仕事の建築を手がける建築家です。
気持ちの良い秋空の下、たっぷり時間をかけて撮影してまいりました。
こちらの建主さんは、タイトルの通り50代のご夫婦で、お子さんもそろそろ独立し始めお二人のこれからの生活を見直すとともに楽しく快適に暮らしていけるようにと現在住まわれているマンションのリノベーションを決意されたそうです。
新築で購入されたマンションは、一般的なマンションの仕様と同様に多くを工業材料でしつらえられていました。工業材料、特に仕上げについては劣化の一途をたどることを身をもって知っていたため、同様の仕上げによるリノベーションでは完成した時が一番綺麗で、その後どんどん朽ちていくことが嫌だなあと思っていました。そんな中で自然素材の経年変化を楽しめる家を設計されていた山本さんを知り、リノベーションをお願いされたのだそうです。
山本さんは、数多くのマンションリノベーションを手がけていて、こうした計画には慣れていました。既存マンションをいじる場合、特に水廻りの配管をいじることが困難なため、設計上トイレや洗面、お風呂、キッチンの位置を動かし難いものです。また、火災報知器などマンション側で監理している防災設備系統も動かすのは大変であり、やろうとすればマンション側の防災設備業者さんとのやり取りなどの手間とお金、時間を要します。こした縛りが多くある中で、動かして良いもの、動かしてはいけないものを見極めながら設計をする必要がマンションリノベーション ではあるのです。
また、近隣住戸への防音の配慮も必要であり、床壁天井の設計や素材選定に配慮も必要になるため、マンションの改修に慣れた設計、施工にお願いするというのは大切なことでもあります。
さて、今回の計画ですが、山本さんらしい自然素材をふんだんに使われた内装に仕上がっていました。空間設計は伸びやかで、素直に既存空間を利用しながら意匠をいじくり回すようなことはせず、しかし動線計画など生活上の機能配慮がプランに上手に落とし込まれていてそれが空間デザインにも効いていました。実際の床面積よりも体感的に広さを感じる設計でした。
マンションは片廊下式で、共用廊下側に玄関と個室が配され、住戸中央部に水廻り、庭側にLDKが配されていました。この構成上北側個室は昼間でも暗くなってしまい、これは改修しても改善できません。しかしやはり仕上げ素材の選定や隣室との繋がり方などを工夫されていて、こちらも閉塞感を感じませんでした。
当日は、改修の完成に合わせて建主さんが購入された家具類も既に入れられていて、これから始まる生活がよく分かるものでした。心地よく新調されたこちらのお宅を、僕が肌で感じた感覚をできるだけ生の状態でお届けできるようにと、撮影にも気合が入りました。今回も素敵な計画を撮影する機会を頂戴しましたことをこの場をお借りしてお礼申しあげます。
