新年あけましておめでとうございます。
皆様には旧年中大変お世話になりました。本年もどうぞよろしくお願い申しあげます。
このブログは、一応僕の事務所のブログなので、本来であればもっと建築や仕事の話をするべきなのかもしれません。ですが僕が設計者としては寡作なこともあり、作品としてご披露できるものも2年に1回程度です。僕がこのブログで日常に触れ、またアートやデザインなどについても書くのは、もちろん掲載できる建築作品が少ないこともありますが、何よりも建築とはそもそも人の身体的な動きとともに生活そのものを包摂するものであり、そうしたことをできるだけ丁寧に追うことが翻って建築の生成にもつながるのではないかと考えているからです。
僕にとっては、キャンプで張るテントに構造美や生活のレイアウトを重ねますし、写真では被写体と空間の関係を常に追っています。一見関係ないように見えるあらゆる事象が、実は深いところで建築とつながっていて、僕は多分多くのことを建築的に思考しているのだと思うのです。
ですので今年も引き続き、僕の半径3mで起こっている様々なことにアンテナを張ってブログに記録していければと思っています。
さて、新年最初のブログですのでお正月のことを書こうかと思いましたが、その前に昨年末12月30日に母の実家で毎年恒例のお餅つきがありましたので、そのことをまずは書いておこうと思います。
母の実家は、千葉県の南部、東京から見て鋸山の裏手に位置し、僕の叔父が家をまもっています。今ではなかなかお目にかかることもなくなりましたが、叔父の家では、昔から杵と臼での餅つきを年末の恒例行事として行っています。
年に一度、母方の親戚が一同に会するので、僕も毎年楽しみにしています。前日に研いだ餅米を朝早くから蒸して、餅つきは夕方まで続きます。1回につく餅米は2升5合、これを8回つくのですが、最初は楽しい餅つきも途中から労働へと変わっていきます。とはいえ、人が多いため、代わる代わる途中休憩をしながら餅をつくと「ああ今年も終わりだな」と一気に年末気分を味わうことになり、餅つきの高揚感と年末の特別な感傷の入り混じったなんともいえない気分になって、心地よくもあります。
1回の餅つきが終わると次の餅米が蒸されるまで30分ほどあるため、この時間を利用して休憩したり食事を摂ったりします。つきたてのお餅を食べられるのは何よりの贅沢、この他にも叔父の家族が豚汁やカレー、お汁粉を用意くださって、晴天の冬空の下、大人数のピクニックのようでとても楽しい時間が流れていきます。
餅つきというのは、労働であり、祭事であり、また祝祭でもあります。こうしたイベントというのはなかなか無いなあと、そのように思うと感慨深いものがあります。
餅をつくという作業も経験するとなかなか奥深いもので、はじめに餅米を杵で押し潰してある程度潰れたら軽くつくのを繰り返し餅にまとめていきます。まとまったら最後にこれを本当につくというようですが、杵を力一杯振り下ろして短時間で餅に仕上げるんですね。これは非常に技術的なものであり、同時に美しい所作でもあります。
お正月には、叔父の家でついた餅でお雑煮を作って美味しくいただきました。因みに千葉の僕の住む辺りでは、昆布で出汁をとった塩味のお汁に大根と里芋を入れただけの素朴なお雑煮にはば海苔をたっぷりかけて食べます。昔は家畜の飼料だったというはば海苔も今では高級食材のため最近ではお印程度にふりかけるだけですが、それでもはば海苔の野趣溢れる風味が、今でも家のお雑煮の味なんですね。