こんにちは。
ゴールデンウィーク(GW)が始まりました。今年は外出自粛要請がありませんので、遊びに出かけられる方も多いのではないでしょうか。
GWの初日、僕は、午前中家の掃除をした後午後たっぷり昼寝をしてから近くの映画館で「呪術廻戦0」を観てきました。夜一人で映画鑑賞なんて何十年ぶりという感じで、それだけでワクワクした休日でした。最近のアニメーション映画は、その完成度に舌を巻くばかりですが、格闘シーンなど激しい動画表現の素晴らしさはもちろん、静的な場面でのシーンカットは写真表現にも通じるものが数多くあり、ついついそうした見方で映画を観賞してしまいました。
さて、少し前になりますが、関東では桜が満開の頃、3月の終わりにマンションリノベーションの完成写真を撮影しに東京まで行ってきました。
建主さんは、大手組織設計事務所にお勤めのお若い方で、お勤め先に近いことからこちらのマンションをご購入されました。マンションは築年数が古く今後建て替えなどの可能性もあるため、最小限の改修をされたとのことでした。もちろん建主さん自ら設計されての改修でしたが、お仕事では何万m2という規模の建築に携われているので、小規模の設計が難しい部分もあったそうです。
住戸内は、既存駆体を上手く利用されながらポイントを押さえたミニマルなインテリアが計画されていました。意匠も、使われている素材や機器類もシンプルかつ最小限で、それ故窓から入る光を孕んだ室内の空気の流れ、溜まりを顕在化して、非常に美しいインテリアが実体化していました。
ミニマルなデザインというのは、要素を最小限に止めることが肝心なのですが、実は視覚的にもそのように見えるように部材の収まりや空間設計において細やかな配慮が必要になります。こうした操作を行えるかどうかが設計の手腕を試される部分でもあり、ごまかしが効かないと共に細心の注意を求められるものなんですね。
今回の建主さんの設計は、削ぎ落とすことで必要な要素を最大限化するというミニマリストにも通じる思想を感じるものでした。まさに空間のために要素が整っているのを実感することができました。
この撮影ではご依頼時のご予算も限られていましたので、わずか2時間の撮影となりましたが、当初建主さんからは記録として数カット残しておきたいとのお話だったのですが、伺ってみると僕自身欲しいカットがたくさんあって、時間の許す限り撮影させていただきました。僕にとっても納得できる写真をお納めすることができたかな、と思っています。
1カット、建主さんからご要望をいただいたアングルがあります。それは水廻りのある廊下から玄関前を見通したもので、正面に木製の椅子が置かれています。この椅子は建主さんが元々持たれていたもので、アンティークなのか、それとも購入されて経年変化で素材表面が飴色になったのかお聞きしませんでしたが、時間を刻んだ良い風合いのものでした。長く愛用されている椅子がこの空間に溶け込んで、ものと空間へ対する建主さんの優しい柔らかな眼差しを感じることができました。
当日は、正に桜が満開で、曇天の空に淡いピンクが滲む春の風景が窓に切り取られていました。これから建主さんは、毎年この風景を愛でることができるのだなと思うと、非常に贅沢な住環境を得られたんだと僕も嬉しくなりました。僕にとっても素晴らしい撮影の機会を頂けましたことに感謝します。この場をお借りして、建主さんへお礼申し上げます。