鈴木俊祐建築設計事務所設計監理『市原の家』完成写真(内観)

こんにちは。

僕は、アート作品を鑑賞したり、それについて色々考えたりするのが好きなのですが、同じくらい漫画を読んだりするのも好きです。カルチャー(文化)について、高尚なものをハイカルチャー、大衆的なものをサブカルチャーと大別することがありますが、漫画のような絵画もあれば、エンターテインメントとしてのアニメーションが非常にアート性を帯びていたりするように、近年ではその境界は曖昧になってきているようです。それでもハイカルチャー、サブカルチャーという棲み分けは、少なくともその分類は当面の間は無くならないと思いますが、作品として素晴らしいものであれば、そうした言語的分類に囚われずに作品そのものを楽しめれば良いと考えています。

僕がサブカルチャーに触れるのは、ハイカルチャーに比較してサブカルチャーを享受する人の総数が多い(母数が大きい)こと、またそれ自体大衆性を帯びていることが多い点で、非常に同時代的であるというのが挙げられます。つまりは、世の中を捉える速度が非常に速いということになるかと思います。

僕は、サブカルチャー作品単体を純粋に楽しみもしますが、同時に他作品と比較しながらあれやこれやと考えるのも楽しんでいます。先ほどハイカルチャー、サブカルチャーの境界が曖昧になってきていると書きましたが、そうした思考ではそれらの境界を横断して、というより文化的分類をそもそも考えずに作品世界を自由にサーフィンすることをお勧めします。例えば「大人になる」ということについて、新世紀エヴァンゲリオンにはなくて、フィッツジェラルドや村上春樹にはあるものなどと思考を巡らせると、作品をフレーム化しているものを探し当てたり、思想的背景を読み込むことで僕達の生きる世界を映し出したり出来るのです。

そうした楽しみをするには少々の思考的センスが必要であり、これは多少の訓練を必要としますが、慣れてくると作品と能動的に関わるゾクゾクするような体験ができるようになると思います。それは最近流行りの作品の伏線回収なんかの謎解きよりも楽しいんじゃないかな、と思うのは僕の個人的感想です。

さて、前々回のブログで鈴木俊祐建築設計事務所が設計監理された『市原の家』の外観完成写真について掲載しました。今回は、同住宅の内観写真をお披露目します。

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最近、ミニマリストという言葉とともに、持ち物を最小限化したり整理したり装飾を排除するようなライフスタイルが流行しています。これは、自分にとって必要なものを厳選して身の回りを整えるという点で、僕も非常に素敵なことだと思っています。

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実はブランド品を収集する人とミニマリストとの根源的な欲求について同じであるというような研究もあるようでそれはそれで非常に興味あるのですが、ここではミニマリストが目指す「要素を最小限化する」ということの美意識にフォーカスして『市原の家』をみていきたいと思います。

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『市原の家』は、写真をご覧いただいてもお分かりのように、非常にすっきりとした印象を受けます。これは、建築を構成する要素を極力減らすことによって生じる効果です。建築は、様々なもの同士がくっついて出来上がっています。このくっつく部分は、異なる部材同士が接することですので、くっつけるための処理が必要になります。この部分を視覚的に消していくと、建築の構成要素を減らして非常にすっきりした印象を与えることができるのです。

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なぜそんなことをするのかといえば、ディティールを消して建築空間そのものを全面に押し出す、あるいは建築をフレーム化しているもの、もっと言ってしまえば核となる建築的な思想を表現するためであると言えます。こうした処理は、仕上げ部材の最小化と併せて、効果的に実体化します。

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実は、部材を減らして何もないように見せるというのは、設計的にも施工的にも大変な労力を要する作業です。それは、見せないように処理をするためにディティールや取り合い、収まりを検討しなくてはならないからです。そのために部材選定から始まり、施工手間が増えていくというのも起こりうることなんですね。

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そのようにしてつくられた『市原の家』は、隙のない建築的緊張を生むと共に、空間特性が最大値化されています。ディティールだけでなくマテリアルも消し去るようなこの住宅は、ものの持つ質量を感覚的に無効化していて、非常に軽やかな印象も受けます。

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こうした建築のスタイルは、非常にコンテンポラリーなものだと思いますが、設計者の設計・監理は並々ならぬものであり、執念さえ感じられます。膨大な設計検討と現場での試行錯誤によって生まれた素晴らしい住宅でした。今回、同住宅を撮影させていただく機会を頂戴し、改めてお礼申し上げます。

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