こんにちは。
ついこの前まで暑い日が続いていたと思ったら、朝晩冷え込むようになり随分秋らしくなってきました。もうすぐ紅葉のシーズンですね。
さて、今回は僕の事務所で設計監理した『幕張のマンションリノベーション2』のブログでのご紹介の2回目になります。この計画については、さまざまな角度からブログに書いていこうと思いますし、これから中古マンションを購入されてリノベーションをお考えになられている方にとってご参考になるような事例を紹介できればと考えています。
今回は、キッチンについてフォーカスしてみたいと思っていますので、理想のキッチンをイメージするのに選択肢を広げられる一助になればと思っています。
キッチンを想像してはじめに思い浮かぶのは、システムキッチンだと思います。システムキッチンは、衛生設備機器の総合メーカーであるTOTOやLIXIL(旧INAX)、生活家電メーカーであるPanasonic、システムキッチンの専門メーカーであるクリナップなど、多種多様な業種が参入しています。それぞれのメーカーのシステムキッチンごとに特徴があり、例えばトーヨーキッチンであれば、デザインと高級感を売りにしていますし、ホーローでしたらタカラスタンダードが有名であったり、塗装技術であればピアノの塗装技術を転用しているトクラス(旧ヤマハ)、ステンレス加工に定評のあるナスラックや永大産業などさまざまです。このほかにもニトリやサンワカンパニーは、リーズナブルな商品を取り揃えています。ちょっと調べてみてもいくつもシステムキッチンメーカーがあがってしまい、どう選べば良いのか迷ってしまいますね。
これらの企業が取り扱っているシステムキッチンというのは、実は考え方は概ね一緒です。つまり規格の寸法があり、仕様や仕上げ部材が決まっていて、決められた選択肢の中で組み合わせて完成形を作っていくというものです。I型キッチンを例にすると、ワイド寸法は、1800、1950、2100、2250、2400、2550、2700というように15cm刻みで決まっていて、これは高さや奥行きについても同じです。規格が決まっていたらなおさらどのキッチンにしたらいいのか分からなくなってしまいそうですが、システムキッチンをご検討される際に参考になるのが各メーカーの強みであったり売りにしている部分です。先ほども申し上げたように、とにかく価格を抑えたいというのであればニトリやサンワカンパニー、ステンレスの天板や骨組みを重視したいというのであればナスラックや永大産業、美しいピアノ塗装の扉であればトクラスといった具合です。各社HPがありますので、各社の売りやキッチンのデザインイメージ、使用勝手に関わるこだわり、扱っている衛生設備機器などを調べられていくつかに絞り込み、実際にショールームへ出向かれるのが良いかと思います。システムキッチンメーカーは、ショールームがありますので、実際にキッチンを見ることができるのが良いですね。
僕の事務所でもシステムキッチンを入れることも多いです。ただ僕は、建築の一部としてキッチンを扱いたいと思っているため、対面式のキッチンにする場合でも、これを囲うような建築的な工夫をしています。キッチンは、システムキッチンが良い、ご予算的にシステムキッチンを選択するなどの場合でも建築的な対応は可能であること、以下の写真で少しだけ触れておくことにします。
ただこうしたシステムキッチンは、寸法や仕様などが規格化されているため、よりこだわりのあるキッチンにしたいとか、住宅の一部として厳密な寸法を要する場合などには対応できないこともあります。そうした場合はオーダーキッチンという選択肢があります。
オーダーキッチンの場合、大きく分けて二つの選択肢があります。一つは、住宅を設計している設計事務所にお願いして設計してもらい、工務店に製作してもらう場合、もう一つはクッチーナやキッチンハウスなどオーダーキッチン製作をしているメーカーに依頼することです。
設計事務所がキッチンを設計する場合、住宅の一部として検討しますので寸法が厳密であるとともに住空間にマッチしたデザインにすることができます。入れ込む衛生設備機器も自由に選べるのも良いですね。価格的に抑えたい場合は、ざっくりとした設計を行い大工工事で作ってもらうこともできますし、家具屋さんに頼んで精度の高い高級仕様に仕上げることもできますので、自由度が高く、住空間にマッチしたデザインとなり、出来るだけご要望に沿った価格検討を行うことができます。これはフルオーダーで背広を仕立ててもらうのと同じようなことですが、デメリットを強いてあげるなら事前に完成品を見ることができないということでしょうか。また、システムキッチンとは異なり工業製品ではありませんので、どちらかといえば職人さんの手の跡が残る造作品になるかと思います。
設計事務所が設計したキッチンとして、僕の事務所で設計したフルオーダーキッチンを一例ご紹介します。以下は、マンションのキッチンリノベーションですが、建主さんがドイツの高級キッチン機器メーカーであるガゲナウのワインセラーや食洗機、IHクッカーなどを入れたいとおっしゃったことからタイトに寸法調整を行うとともに使用部材も高価なものを使ったものになります。
同じようにオーダーキッチンを作るのにオーダーキッチンを専門に取り扱っているメーカーに依頼することもできます。設計については設計事務所が設計するのと大差ありませんが、キッチンメーカーとしてストックしている部材、ノウハウが揃っていますし、また社内、もしくは提携した工場を抱えているため、作り手に左右されない工芸品のようなキッチンを作ることが可能です。ただしキッチン専門メーカーのフルオーダー品になりますので、価格はお高くなります。
今回『幕張のマンションリノベーション2』に入れたキッチンは、この仕様になり、ステンレス造作キッチンのパイオニアである松岡製作所に製作いただきました。使用するステンレスの他、ステンレスの曲げや溶接の技術は一級品であり、また各部ミリ単位での製作が可能で、シンクの入隅をピン角から好きなアールで指定できることにも驚きました。このお家では、建主さんがステンレスの塊のようなキッチンをご要望されていて、行き着いたのが松岡製作所でした。マンションのリノベーションということもあり、搬入経路の狭さから当初現場での一部溶接を検討されていましたが、松岡製作所の所長さんが何度も現場に足を運ばれて、自作のキッチンの型紙で検討された結果、一体ものでの搬入を実現していただきました。そのあまりの美しさと精度に僕もうっとりしてしまいましたが、建主さんご夫婦も、このキッチンを眺めながらカップラーメンをすすると冗談をおっしゃっていました。
いかがでしょうか。簡単ではありますが、キッチンについてその種類と選択される目安について書きました。これからお家をつくられたりリノベーションをご検討されている方にとってご参考になりましたら幸いです。