一級建築士事務所やしろ設計室 設計『吉川美南の家』完成写真

こんにちは。

3月に入り気温も上がり、春らしくなってきました。梅の花、河津桜が咲き、これから様々な花が咲き乱れる季節を迎えます。冬の間じっと溜め込んでいた生命の活力を一気に解放するようで清々しく思います。

一方で今年は花粉の量が多く、花粉症のひどい方も多いようです。幸い僕は花粉症ではないのですが、それでも鼻や目がむず痒くなるほどです。この時期は、洗車してもすぐに車は汚れますし、自律神経の不調を訴える方も多いのではないでしょうか。僕も春先は、毎年気分が鬱々としたりざわついたりして少なからず苦しい季節でもあります。春は、自身を取り巻く環境がガラリと変わる時期でもありますから、変化に対するストレスも起因しているようですね。

これは僕の個人的な妄想なのですが、花々が一斉に咲くように、春を迎えるというのは膨大なエネルギーを要することではないでしょうか。命あるものは、自身の内部にある活力を自然界に放出して分け与えることで春という巨大なエネルギーを生み出しているのではないかと思ってしまいます。僕は、漫画『ドラゴンボール』で孫悟空が「オラに元気をくれ!」という元気玉を思い出して、人間を含む自然界のあらゆる生命が悟空に元気を少しずつ分け与える様を想像して、「春ってこんな感じなのでは」と一人でニヤニヤしています。僕の生気を春に奪われているんじゃ無いかと。

さて今回は、一級建築士事務所やしろ設計室八代国彦さんが設計監理した『吉川美南の家』を撮影しましたので、この住宅の完成写真を掲載します。

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この住宅は、若いご夫婦が暮らす木造2階建てのお家です。お二人で住むのに十分な大きさながら延べ床面積はタイトに計画されていて、心地いよいスケール感が印象的でした。一方でご夫婦は多趣味で、大きなガレージやロフトなどが用意されています。住まわれて1年、生活も落ち着かれて、多くの趣味のもので飾られた室内は、完成したばかりのがらんとしたお家には無い魅力に溢れていました。

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実はこのお家、八代さんにお声がけいただいて撮影に出向いたのは一昨年の冬になります。この時、外構の工事が未完成だったため内観の撮影のみを行い、日を改めての外観撮影となりました。その後八代さんのご事情やお天気などの問題で撮影が延びてしまい、ようやく今年になってから再度のお伺いが叶ったのでした。

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改めてこの住宅を撮影してみて、生活を包摂する家の良さを再確認できましたし、またできたばかりの頃の建材の尖った印象が丸く落ち着いて環境にも馴染んでいるのを心地よく感じることができました。

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今回、2回撮影した写真をまとめて掲載することも考えたのですが、先日撮影した外観メインの写真をまずはご覧いただきたいなと思い直し、これを載せることにしました。敷地は、湾曲した川に接するような突端ともいうべき角地にあり、そこに控えめながらもどこかシンボリックな造形が映える建築が印象的です。

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これは蛇足ですが、僕は中沢新一の『アースダイバー』という本を思い出しました。『アースダイバー』は、現代の東京の地図に縄文時代の地形を重ねて見えてくるものを探求するという、学術的信憑性は乏しいかもしれませんが悠久の時間的交差による直感的解釈が純粋に読み物として面白い本です。そこには、電波塔やテレビ局が建っている場所がどれも縄文時代では、海に張り出した岬の突端だったというのが書かれているのですが、かつて突端とは黄泉の国との交信の場所であって、図らずも現代の電波発信基地がそうした場所に立っているという事実に胸躍った記憶があります。この住宅を見ていると、突端に建つ建築の独特の佇まいが面白く、なんとなく神秘的にさえ感じられたのでした。

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