こんにちは。
僕の事務所で設計監理して2015年に完成した「モンタージュ2」という高床式の平家の住宅があります。今回このお家が、「住む人」と「住まいの専門家」をつなぐ、家づくりのためのサイトである「HOUZZ」に「猫好きが暮らす9つの家」という特集で掲載されました。
このお家の小梅ちゃんという三毛猫が、猫用出入り口から顔を覗かせたところを僕がスナップした1枚なんですが、可愛らしく撮れていますのでここに紹介しておきますね。
さて、僕の事務所では神奈川県藤沢市の診療所のサテライト施設を設計監理していました。この施設は計画から実現まで紆余曲折あり、上棟してからも一時工事がストップするなど苦労した計画だったのですが、この春ようやくお引き渡しを完了しました。まだ外構工事が残っていますが、僕も建主さんに無事お引き渡しができたことにほっとしています。
この建築では、既製家具では対応できない幾らかの造作家具の設置が必要でした。もちろん工事を請け負っていただいている工務店さんにつくっていただくこともできたのですが、今回僕がどうしてもお願いしたい木工房があったので、そちらに無理を言って対応していただきました。
その木工房は、奈良でご活躍されている「カタチ工作所」さん(以下カタチさん)です。カタチさんとはInstagramを通じて知り合いになりました。どういったきっかけで仲良くなったのか覚えていませんが、カタチさんのつくられる木製の家具や建具、関わられた店舗の計画やワークショップの風景など、素朴な造形の中に繊細でハイセンスなプロポーション感覚が光り、魅了されていきました。
以前このブログでもご紹介した木製スツールやキャンプで使用する薪置きもカタチさんの手によるものです。
Instagramを通じて、カタチさんとコメントし合う仲になり、いつしか僕はカタチさんに家具をつくって欲しいなと思うようになりました。カタチさんはヴィンテージ感漂う骨董店や器屋さん、お菓子屋さんなど手掛けられていますが、どれも古びた風合いと現代的な洒脱な感性が融合したような魅力的なお仕事ばかりで、カタチさんの気さくで誠実、かつユーモアのある人懐っこいコメントも相まって、ファンになってしまったんですね。
今回、お願いした家具はその量も大きさも大したものではないとはいえ、奈良から持ってきていただくというのは流石に僕も躊躇しました。それでも図々しい僕は、ご無理を承知の上カタチさんにお声がけさせていただきました。カタチさんも二つ返事でお受けくださって、3月の末に藤沢まで車で納品いただけることになりました。
当日は現場近くのコンビニエンスストアで待ち合わせをしました。初めてお会いするペンフレンドに僕の胸のドキドキは激しくなるばかり。中年のおじさんが何をやっているんだという感じですが、恋焦がれた方と初めてお会いするというのはこんな感じなんでしょうね。
さて、お会いしたカタチさんは、予想通り誠実な印象の中にちょっと人懐っこい雰囲気のある素敵な方でした。早速それぞれの車で現場に向かい、挨拶もそこそこにつくっていただいた家具を納品いただきました。
今回カタチさんにお願いした家具は、物販用の長もののカウンターと小さな机、それにこの机脇に設置する床置きのキャビネットの三点です。僕はカタチさんに寸法だけお伝えして、意匠設計も含めてカタチさんの好きなようにつくっていただくことを希望しました。カタチさんからは事前に手描きの図面を送っていただいていて、その通りに制作いただきました。ざっくりとした無骨な意匠の家具は、各部のプロポーションが繊細なため、非常に品の良いものでした。しかも今回カタチさんからのご提案で「奈良の檜を使います」と言っていただき、本当に美しいものに仕上がっていました。あんまり美しいので、僕は家具に触ることを躊躇するほどでしたが、そのことをカタチさんに申し上げたら「使い込んで味が出るんですよ」と笑われてしまいました。
家具を設置いただいて、我慢できずにその場でスナップ写真を幾らか撮影して、記念にとカタチさんとのツーショット写真も撮らせていただきました。ここでは披露しませんが、この写真のカタチさんと僕のぎこちない感じの微妙な距離感が付き合い始めのカップルのようで、それがまたいい歳をしたおじさん二人なので笑わずにいられないんです。
その後お昼をご一緒して、カタチさんは7時間かけて奈良に帰られました。別れ際にカタチさんから中川政七商店の布巾をお土産にいただきました。僕からは千葉で採れた海苔をお渡ししました。中川政七商店の布巾、家路に着くまで我慢できず、帰り道に立ち寄ったスタバで開封してしまいました。良いものをいただき、ありがとうございました。
今回ご無理を申し上げたにもかかわらず、丁寧にご対応くださったカタチさんにあらためてお礼申し上げます。カタチさんにお会いできたことも嬉しく、また素晴らしい家具をお譲りいただけたことにも感謝しております。次回お会いするのは奈良で、ということで、実は夏休みを利用して奈良にお伺いできればと画策しております。カタチさんにまたお会いできること、カタチさんのお仕事を拝見できることを楽しみにしております。